ブログ説明


早穂理さんは、いのちの森「水輪」を造った塩澤夫妻の娘さんのお名前です。出産時に分娩の医療ミスにより、脳に傷をつけてしまいました。
早穂理さんは歩くことも、話すことも、自分の手で食べることもできませんが、心はみんな解っているようです。そんな早穂理さんの毎日を紹介させて頂きます。
ご感想・お問合せは、メール suirin@suirin.com までお願いいたします。

2013年11月28日木曜日

言葉


11月27日

こんにちは。今日は、さおりちゃんの言葉についてお話します。さおりちゃんは、生まれた時の傷で、頭蓋内出血を起こして、ハンディを負ってきたため、言葉を話せません。しかし、その代わりに、様々な声色で感情を表現しています。例えば、ごきげんなときには、だららららら~、や、おえおえおえ~、りりりり~、と大きな声で、ごきげんだよー、と教えてくれます。先日は、ちょっと変り種で、「あダダダダ、ら~」、の「ら~」にアクセントがついて歌っていました。2年前くらいには、「えおい~」という3語のことばを、おいしい、というようにつかっていたときもあります。

 これは、みどり先生から聞いたお話ですが、さおりちゃんは「ママ~」という言葉を、小さいときに、たった一度だけ言ったそうです。それ以来さおりちゃんのくちからその言葉を聞いていないので、ときどき「ママって言ってね、ママって。」といいながら練習するそうです。私も、こっそり「さおりちゃん、ママ、ママだよ。いってごらん。」と、ときどき練習します。さおりちゃんは、じっと私の言葉を聞いて考えているようですが、ひかえめに「あ、あ~」といいます。さおりちゃんは、本当は心の中ではたくさん、ママ~といっているのかもしれませんね。

 でも、いつかきっと言ってくれるかもしれないと思って、さおりちゃんといつも「ママ~、ママ~!」と練習していきます。さおりちゃんのこころと体には、きっといつまでも「ママー!」という音が響いていることでしょう。

 
担当、佐藤りえ

2013年11月22日金曜日

さおりちゃんの満月


こんにちは。昨日は、満月でした。さおりさんは、丸一日中眠らず、目がらんらんとしていました。

 さおりさんは、時々、興奮して眠らない時があります。そういう時はたいてい満月の前後です。

 さおりさんが小さいときに、主治医のせんせいが、満月の夜に眠らないさおりちゃんを見て「さおりちゃん、それじゃ、オオカミ少女じゃないかー」といいました。それを聞いてみどり先生はすかさず「先生、かぐや姫と言ってください!!」というやりとりがあったそうです。それからは、先生はさおりちゃんが診察に行くと、毎回「かぐや姫がきたね!!」といってくれたそうです。

さおりちゃんは、30年以上、飯綱に来てからですが、お月様のサイクルで生活しています。一日が25時間なので、一日に一時間ずつ、生活の時間がずれていきます。

なので、夜遅く起きだして、明るくなってから眠る日もでてきます。

満月の晩には、さおりちゃんの元気な声が、さおり庵に響きます。

 
担当、佐藤りえ

お風呂


こんにちは、今日はさおりさんの移動入浴の日でした。昨日は、道が凍って車が通れなかったため、一日遅れて今日になりました。毎回、優しいヘルパーさんが3名ほど来てくださり、母屋のリビングへ組み立て式の浴槽を運び込んで、お湯をそこへ溜め、

さおりさんを運んでお風呂に入れてくださいます。

 さおりさんはお風呂の時間も大好きです。

 
 昨年の冬は、乳腺症が悪化したため、菌の感染を防ぐために移動入浴車の浴槽ではなく、自家用のプール型浴槽を使い、ホースを組み立てて、浴槽のお湯を使って、母屋リビングで、水輪スタッフ実習生の皆で、さおりさんをお風呂に入れました。

 さし湯のお湯はたりているか、お風呂のお湯の温度はちょうどよいか、ホースを通ってプールにお湯が来るまでに、冷めてしまうので、熱めに温度を設定したりと、皆で役割分担をしてよい経験ができました。

 さおりさんに風邪をひかせないように、皆でさおりさんのいのちを真剣に守りました。

 

担当、佐藤りえ

2013年11月15日金曜日

ななかまど


こんにちは。昨日は初雪が降りました。まだ11月の初めだというのに、けっこう積もりました。



さおりさんの部屋の大きな窓から見渡す雪景色は、白銀の世界に、朝の日光が反射して、キラキラと光りとてもきれいでした。さおりさんのお部屋の前にはナナカマドの木が、窓に寄り添うように生えています。この木は、さおりさんが飯綱へきたころには、まだ窓の下に枝のてっぺんが来ているぐらいだったそうです。

 






 今では窓から見上げるくらいに、ナナカマドの木も大きくなりました。
 

さおりさんといっしょに成長し、さおりさんを、この30年間見守ってきた木です。

さおりさんの部屋を、ナナカマドの部屋とわたしたちは呼んでいます。

 さおりさんが、ほとんどの時間をすごすこの部屋は、部屋の中にいながら自然の森の中にいるように感じるほど、窓が大きく作ってあり、木々の枝がまじかに見えます。 

 春の小鳥のさえずりや、5月にはナナカマドの白い花、夏にはみどりの葉っぱの葉脈が光に透けて見え、秋には赤い実がなり、冬にはふんわりと枝に積もった白い雪。それぞれの季節が、手に取るようにまじかに見えます。

 
 さおりさんは365日、どこへも行かずこの窓から見える飯綱の四季を感じとっています。
 
担当:佐藤りえ

2013年11月11日月曜日

仙道さん


こんにちは。きょうは、さおりさんのマッサージをしてくださっている仙道さんのことをおはなしします。

 さおりさんは、仙道さんのマッサージがとっても大好きです。横になったままの姿勢が多いさおりさんは、以前は、左手がむくんだり、肩が凝って辛そうだったりしていましたが、今は一週間に4日仙道さんに来ていただいて、とっても幸せそうにしています。

 仙道さんは、盲目のマッサージ師さんですが、とても優しくさおりさんに接してくれる方です。仙道さんは、障がいを持っている人は、それに耐えうる強さを持っている、とおっしゃいます。「わたしは、いつもさおりちゃんから、いろいろ教えてもらっているよ。」とおっしゃいます。


 
 今年の5月にさおりちゃんが肺炎になって危篤になった時も、仕事の合間に毎日かよってくださり、ずっと付き添ってくださいました。

 じっとさおりさんにお手当てをして、気を送ってくださっていました。

さおりちゃんが快復した時には、心から喜んでくださいました。

 さおりさんも、そんな仙道さんが大好きで、とても安心して心をかよわせているようです。
担当:佐藤りえ

2013年11月3日日曜日

たつ巻き水

こんにちは。きょうはさおりさんの飲んでいるたつ巻水についてお話します。
 たつ巻水とは、8の字の形をしたグラスの中に、水道水を入れまわすことで、グラスの中でたつ巻を起こします。そうすると水道水がなめらかで飲みやすい水へと変化します。
これは、水輪へいらっしゃったシュタイナー医学を学んでいる先生に教えていただいたものです。
水輪では、今まで毎年5月に、アントロポゾフイー医学会がひらかれてきました。アントロポゾフィーとは、シュタイナー医学のことです。
 シュタイナーという思想家が説いた医学は、より人間の全般におよび、総合的に外側からも内側からも治療する医学です。
 さおりちゃんも、いらっしゃったせんせいがたに診ていただき、教わって
マッサージや、炭シップをしたり、音楽療法をしてきました。
 炭シップは、炭の作用で体内の毒出しになります。さおりちゃんは、脾臓がよくないといわれているので、背中の下のほうに、お湯に解いた炭を綿の布へ浸して、直接肌にあて、ネルの布でくるんで温枕で20分くらい温めます。体も暖まり、気持ちよさそうです。
 音楽療法は、体内のリズムをととのえるために、決まった時間に、一定の鐘の音を鳴らすということをしました。昼夜ぎゃくてんの生活は、変化ありませんでしたが、音の持つふしぎなはたらきが体内にも影響するのだということがわかりました。芸術療法というのは、自分を表現することで、能動的に、人間の治癒に働きかけるのだそうです。

 さおりちゃんの生活も、アントロ治療を受けることで、豊かになったようにおもいます。
 
担当:佐藤りえ